極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
「陽奈、久しぶりね」
姉の萌々が微笑みかける。どことなく憐れみが滲んでいるようにも見えた。
子供の頃はよく似ていると言われたけれど、成長するにつれて萌々は美しさが際立ち、街でも有名な美少女になった。
目鼻立ちの整った美しさは、結婚した今でも変わらない。
「おねえちゃん、元気にしてた?」
「まぁぼちぼちね」
三人で連れ立ってリビングである大きな和室に入る。
そこでは父の豊が神妙な面持ちでどっしりと座っていた。
「お父さん、ただいま」
「ああ、陽奈子。おかえり」
六十二歳の豊は黒く豊富な髪が自慢だったけれど、今回の借金騒動で気苦労を重ねたのか、白いものがちらほらと混じったようだ。
目もとにも老化が進み、涙袋はさらに厚さを増したように見える。