極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

「陽奈、久しぶりね」


姉の萌々が微笑みかける。どことなく憐れみが滲んでいるようにも見えた。

子供の頃はよく似ていると言われたけれど、成長するにつれて萌々は美しさが際立ち、街でも有名な美少女になった。
目鼻立ちの整った美しさは、結婚した今でも変わらない。


「おねえちゃん、元気にしてた?」
「まぁぼちぼちね」


三人で連れ立ってリビングである大きな和室に入る。
そこでは父の豊が神妙な面持ちでどっしりと座っていた。


「お父さん、ただいま」
「ああ、陽奈子。おかえり」


六十二歳の豊は黒く豊富な髪が自慢だったけれど、今回の借金騒動で気苦労を重ねたのか、白いものがちらほらと混じったようだ。
目もとにも老化が進み、涙袋はさらに厚さを増したように見える。

< 81 / 293 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop