極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない

未恵が腰を浮かせて念押しする。
萌々も同様に「陽奈、本当に大丈夫なの?」と詰め寄った。


「うん。だって、私がその人と結婚すればみんなの幸せを守れるんだもの」


――そう。最終兵器ともいえる手段は、陽奈子の政略結婚だったのだ。


「陽奈子を犠牲にして成り立つ幸せなどあってはならない」


豊はもともとこの話は乗り気ではなかったらしい。
工場の困窮を耳にした相手先が話を持ちかけても、二度ほど断ったそうだ。

しかし、さすがに三回目にやって来たときには、陽奈子本人の意向を確かめてからという話になったらしい。

そもそも今回の話をもってきたのは、工場で造られる部品の発注元であるツキシマ海運だった。
そのため断る筋合いはないに等しい。それでも、娘の幸せを考えると簡単に首を縦に振れなかったと未恵から聞いている。


「私、犠牲になったなんて思ってないよ。それにお父さんの工場がなくなるのは絶対嫌なの」

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