極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
「いったいいつまで撮り続けるのかと思って見てた」
「……はい?」
「あんなに長い行列を作られる観光客は初めて見たよ」
男性がくすりと笑う。
なんというか、とても魅惑的な笑みだ。周りの空気までくすぐったさに振動したような感じと言ったらいいのか。
「そ、そう、ですよね」
その笑顔にドキッとして言葉がたどたどしくなる。それくらい惹きつけられる笑顔なのだ。
ところが、僅かに浮かれた心は直後に打ち砕かれた。
「あんまり能天気でびっくりだな」
「……え?」
「普通は断るだろう。代金を徴収するカメラマンってわけでもないのに」
いきなりケンカを売るような口調で言われ呆気に取られる。
ついさっき見せられた笑顔はまやかしだったのか。侮蔑が含まれていたのに気づかず、ドキッとした自分が情けない。