極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
その御曹司が、マルタ島で出会った貴行なのが信じがたい事実なのだ。
こんな偶然があるのだろうか。
「ツキシマにとっても、陽奈子のお父様の持っている技術はとても価値のあるものだ。つまり今回の結婚は、ウィンウィンの関係性にある」
お互いに利益や価値のあるもの。貴行はそう言いたいらしい。
「だけど貴行さんは私でいいんですか?」
空港に見送りに来なかったのは、あの場限りで終わりのものだという答えなのではないか。
そんな陽奈子を結婚相手に選んでいいのか。
陽奈子はともかく、大企業の社長のうえ容姿端麗な貴行なら相手に困ることもないだろうに。
「陽奈子は? 陽奈子はどう考えているんだ」
「私は……父の工場を守れるならそれで」
それが一番だ。なによりも大きな目的。
「陽奈子らしいな。まぁ陽奈子ならそう考えるだろうなと踏んではいたが」
「……お人好しって言いたいんですよね?」