極上御曹司は契約妻が愛おしくてたまらない
記憶を塗り替えよう。
あのとき空港で、陽奈子は貴行を待ってなどいなかった。さっさと飛行機に乗り込み、マルタ島を飛び立ったのだと。
「ともかく、この結婚はお互いの利害が一致したうえでのものになる」
「はい。父を救ってくださってありがとうございます」
そのひと言に尽きる。
「アパートで荷物の準備ができたら連絡をくれ」
連絡先の交換は、茫然としているうちに萌々が陽奈子のバッグからスマートフォンを取り出し、手早く済ませていた。
「……荷物の準備って?」
「ふたりの新居に運び込むものがあれば、それをまとめておくようにって話だ。さっき話しただろう?」
まさか聞いていなかったのか?とでも言いたげな口調だ。
「え!? もう一緒に暮らすんですか?」