恋のレッスンは甘い手ほどき


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「なんでそっちの部屋に布団を持っていってるんだよ」

引っ越しした荷物を片付けていると、後ろから呆れたように貴也さんに声をかけられた。

「なんでって……」
「鈴音はこれからこっちの部屋で寝るんだろう?」

そういうと、貴也さんの寝室に招き入れられた。

「あ、そう……ですね」

赤面して俯くと、ニヤニヤしながら頬をつつかれた。

付き合いだして2ヶ月後。
夏休みの休暇を利用して、貴也さんのマンションに引っ越してきた。
今度こそ同居ではなく、同棲である。

「マンション、引き払わなかったんですね」

アメリカへ行く前に、てっきり引き払ったのだと思っていたが、部屋は以前のままだった。
家具も置いていったらしい。

「もとからアメリカは半年の予定だったんだ。だから必要な物しか持っていかなかった」
「半年!?」

もっと長く行っているのかと思ってたから意外と短くてビックリする。
元から半年ってわかっていたのか。

「研修だからな」
「研修!?」

転勤かと思ってたら、研修で半年行っていただけだったってこと!?
あの頃はもう数年は帰ってこないんだろうなぁなんて思ってたが意外と短かった。

「部屋のレイアウトも少しずつ変えていこう。本格的に二人で使っていくんだし」

二人でという言葉がくすぐったい。

「そのうちもっと広い部屋に引っ越さないとだな」
「え?」

ここもなかなか広いけど……。これ以上広いところって必要?
疑問に思って首を傾げると、貴也さんも同じように傾けた。

「え? 俺はこれから先の将来を見据えて言ってるんだけど」
「これからの将来……?」

どういうことだ?
意味がわからずポカンとしていると、貴也さんはますます不思議そうにした。

「俺は鈴音との将来も考えてるよ」
「将来……」
「いつかは結婚したい」

はっきりそう言われて言葉が出なかった。
結婚……。結婚!?
やっと頭が追い付いてきたと同時に、顔が真っ赤になるのがわかった。
貴也さん、私と結婚も考えてくれてるの?

「鈴音は違うかもしれないけど、俺はそのつもりだから」
「わ、私もです! 私も貴也さんと結婚したい!」

そう宣言すると、嬉しそうに微笑まれた。

「じゃぁ、結婚を前提に付き合ってください」

両腕を広げるので、思いっきりその中へ飛び込んだ。

「こちらこそ」

大切な宝物のようにお互いをギュゥと抱き締めあう。
貴也さんの言葉に、温もりに、声に……。
全てに胸がときめいている。
もうこれから一生、ときめきの練習なんて必要ないんだ。
恋人契約も要らない。
そんな事がこんなにも嬉しくてたまらない。
ずっと一緒に居られるんだね。

「貴也さん、これこらも末長くよろしくお願いします」

そう言うと、初めて自分からキスをした。






END








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