恋のレッスンは甘い手ほどき

その場所は会社からほど近く、最寄り駅にも近い。
今までよりも通勤がかなり楽になるだろうな。
駐車場に止められている車類は、車に詳しくない私でも高級車だとわかるものばかり。エントランスホールにはコンシェルジュが24時間滞在しているそうだが、駐車場には地下から繋がるエレベーターがあるとのことだ。
それに乗り込み17階で降りて部屋に通された。

「わぁ、凄い」

部屋に入ってリビングに通されると思わず感嘆の声が出る。
広いリビングには天井までの大きな窓があり、そこからは都心の風景が綺麗に見えている。高層マンションならではの景色だ。
部屋の中も20畳はあるかと思われるリビングとカウンターキッチン。他に二部屋ある2LDKという間取りの様で、その広さにさすがは弁護士だと思った。

「高所恐怖症とかじゃないよな。それと鈴音の部屋は俺の部屋の前。空き部屋だから自由に使って」

書斎や寝室を分けたかったが、忙しくてそんな悠長なことができずずっと一部屋空いていたと説明された。

その一部屋だけでワンルームの私の部屋より広いんですが……。
さすがだなと感心する。
とりあえず荷物を部屋に運び、使える家具は今後業者に運んでもらうことにした。
リビングを見渡すが全体的にシンプルな家具が多く、物が少ない。
白とネイビーの落ち着いた配色で統一され、男の人の部屋という感じだ。
しかし……。

「……汚い」

一言声に出てしまった。
いや、部屋が汚れているとかゴミだらけとかそういうことではない。ただ、あちこちに本や資料が詰まれていたり、服が置いてあったりと乱雑なのだ。

「あぁ、掃除とかしている暇なかったからな」
「じゃぁ、一緒に暮らすにあたって片づけてもいいですか?」
「むしろその方が助かる」

私の提案に少し嬉しそうに笑った。
キッチンはあまり使っていないのかとても綺麗で、そこからコーヒーを入れて持ってきてくれた。

「ありがとうございます」
「あぁ。コーヒーメーカーがあるから好きに使え。それでだ、同居するにあたって、いくつかルールを決める」


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