恋のレッスンは甘い手ほどき
そのままリビングへ戻り、ソファーにストンと座る。
頭の中はあの写真でいっぱいだった。
あの綺麗な人……。親しそうに見えたけど、お見合い相手だったんだ。
この前は会社の玄関からでてきたのだから、きっと同じ会社の人なんだろう。
茉莉さん。
釣り書きでは名前と写真しか見えなかったけど、私より若そうだった。20代半ばくらいだろうか。
童顔の幼い顔立ちで着物がとてもよく似合う。
お人形みたい。小柄で、きっと男性なら庇護欲を駆られるのではないだろうか?
そんな人がお見合い相手ならきっと誰もが喜ぶはずだろう。
貴也さんだって……。
なのにどうして茉莉さんとお見合いしないのだろうか。
もしかして、釣り書き見ていないのかな?
いや、でもきっと茉莉さんと知り合いなら彼女から写真のことは聞いているのではないだろうか?
だったら……。
そこまで考えて、「ん?」と自分で自分に驚いた。
別にそんなことどうでも良いではないか。なんでそこまで気にしているのだろう。
お互いそこまでプライベートは干渉しあわないことになっている。
表面上、恋人に見えればいいのだから。貴也さんが誰とどうしていようが関係ない。
もし、茉莉さんと正式にお見合いするようになったとしても。
好きな人や恋人が出来たら、偽恋人関係を解消する。そういう話になっている。
けれど私に好きな人が出来るとは思えない。
ということは、確率的には半年以内に貴也さんから「終わりだ」と告げられるかもしれない方が高いのだ。
もう偽の恋人は必要ない、と。
新しい本当の恋人ができたから、と。
もしかしたら、その相手が茉莉さんなのかもしれない。
「……何だろう、なんか……」
面白くないと感じた。