恋のレッスンは甘い手ほどき


――――

「鈴音ちゃんは木崎弁護士にプレゼント、何を贈るの?」

クリスマスまであと少しといったある日。
休憩時に、目の前に座ってお昼ご飯を食べていた同僚の大関さんはニッコリ微笑みながら聞いてきた。

「え?」
「またまた、とぼけちゃって~。楽しみよね」

大関さんはニコニコと笑いながらご飯を食べきった。
何の話だろうとキョトンとする。

「プレゼント?」
「そうよ。もうすぐクリスマスでしょう?」

母親のような微笑みで、でも好奇心丸出しでそう聞いてくる。
あっ!
そう声に出しそうになったのを寸でで止める。
し、しまった! そうだよ、クリスマスと言ったらクリスマスプレゼントじゃん!
二人で過ごすことが嬉しくて、プレゼントの事、完全に忘れていた!
うわぁ、どうしよう。
頭を抱えたくなるのを押さえて、大関さんにはすまし顔を作る。
仮にも、恋人と過ごすクリスマスなのにプレゼントのことを忘れてたなんて口が裂けても言えない。

「ひ、秘密です」
「まぁ、ふふふ。若いっていいわねぇ。じゃぁ、何を貰ったのかは聞かせてね」
「はい」

大関さんは追及せずにその話は終わった。
でも、貴也さんからクリスマスプレゼントなんてもらえるのだろうか?
いや、そもそも。
偽とはいえ恋人同士なんだから、プレゼントを渡すのは当たり前か。
いや、でも偽なんだからそこまですることはないって言われるかな。
もしかしたら貴也さんからはもらえないかもしれないけど、私は何かプレゼントしたいな。
あぁ、でもどうしよう。
クリスマスなんて何年も縁がなかったからプレゼントのこと浮かびもしなかった。
私は慌てて望に連絡を入れる。
望ならなにかヒントをくれるはず。

『ねぇ、男の人にクリスマスプレゼントって何を贈ったらいいのかな?』

メールを送ると、すぐに返事が来た。

『木崎さんに?』
『そう。クリスマスにデートすることになったの』
『まじか。じゃぁ、プレゼントあげなきゃだね。週末買い物に行こうよ』
『ありがとう!』

さすがは恋多き女。こういう時、すごく頼りになる。
そのまま日時を決めて、ホッと一息をついた。



< 84 / 104 >

この作品をシェア

pagetop