恋のレッスンは甘い手ほどき
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そして、クリスマス当日がやってきた。
貴也さんとは19時に、メールで送られてきたお店で待ち合わせするとこになっている。
そのお店、調べてみたらなかなか有名な高級フレンチレストランだ。
貴也さんは仕事帰りのスーツで来るだろう。
私はこの日、早番で大量に唐揚げを揚げたから髪まで油臭い。なので、一度帰ってシャワーを浴びてから向かうことにした。
「これでいいかな」
部屋の鏡の前で一回転する。
実はデート用の服も望と会った時に買っていた。
淡い紫のベロア素材のワンピースだ。
手持ちの服でいいかなとも思ったけど、望が『木崎弁護士ならこういうイベント時は良い所へ連れて行きそう』というので、PTOに合うようなワンピースを選んだのだ。
これなら高級フレンチレストランに着て行ってもおかしくは見られないだろう。
心の中で望に感謝と手を合わしながら、コートとマフラーを羽織った。
そして。
「これも忘れずに」
貴也さんに貰った指輪を身に着けて、少し眺める。
仕事の時は外すけど、それ以外の時はずっと着けっぱなしだからすっかり指になじんだ。
そして、鞄には貴也さんへのプレゼントがしっかりと入っている。
「喜んでくれるといいな」
期待と不安が入り混じる。
こういうところ、本当に恋愛慣れしていないから困る。
「あ、もう出なきゃ」
時計を見たらいい時間になっていた。
慌ててパンプスを穿いて、家を飛びだす。
街はイルミネーションがあちこちに飾られていて、とても綺麗だ。
今までなんて見向きもしなかったし、待ちゆくカップルを羨ましく見ているだけだった。
毎年、一人でケーキとチキンを買って、ひっそりと漫画を読みながら過ごしていたな。
今年はこんな風に過ごせるなんて思いもしなかった。
にやける顔を押さえながら、待ち合わせのレストランへ行く。
すると、貴也さんからメールが来ていて『少しだけ遅れるから、中で待っていて』と来ていた。
「了解です」
呟きながら返信し、立派な入口に腰が引けながらも中へ入って行った。
「木崎様ですね。お待ちしておりました、こちらへどうぞ」
予約してくれた貴也さんの名前を告げると、入口にいた男性は心得たように頷き、中へ案内してくれた。
周りはカップルだらけだ。
「あの、連れは少し遅れるそうで……」
「承知いたしました」
窓際の席に座り、少し緊張した面持ちで貴也さんを待つ。
こんな高級そうなオシャレなレストランなんて初めて来るし、なんだか落ち着かない。
貴也さん、早く来ないかな。
時々、スマホのメールを確認するがあれから貴也さんから連絡はなかった。
どうしたんだろう。
仕事、終わらないのかな? まさか、事故とかに遭ったりしてないよね?
時間だけが過ぎて、どんどん不安になってくる。
「お客様、なにかお飲み物でもお持ち致しましょうか?」
見かねた店員が声をかけてくれた。
時計を見ると、もうすぐ一時間はたつ。
周りの人も時々こちらをチラチラ見ており、確実にすっぽかされた人のようになっていた。
「えっと……」
どうしようか、そう迷っていたとき。