悪役令嬢、乙女ゲームを支配する
小さなセカイで愛を誓う
夜が明けると私はアルの隣で目を覚まし、寝顔を見られていたことを恥ずかしがったり、昨日の夜を思い出して顔から火が出そうになったり――
とにかく昨日では想像できない程幸せな朝を迎え、アルのことを気にして私は一度部屋に戻った。
アルは私との結婚を決めたことをみんなに伝えると言っていて、私はまだ“結婚”については何も言及していないのにアルの中ではもう私がアルと結婚することは決定事項らしい。
誰もがリリーと思っていたし、城の人間はそれを望んでいた。もちろんリリー本人も。
私とアルの結婚が簡単に認められるとは思っていないし、私自身もこれからが一番大変なのはわかっている。
それでも私は、アルと生きる未来を選んだことに後悔はしていない。
だってそれが、私自身も強く望んだ未来だから。
「あ……そういえば私昨日ラナおばさんと一緒に寝る約束してたんだった!」
急に私はおばさんとの約束を思い出し部屋から飛び出した。
ドアの前にはアルが護衛としてつけた使用人が立っていて、どこかへ行こうとする私に慌てながら声をかける。
「マリア様! どこに行くんですか!? きっともうすぐ王子がお呼びになられるかと――」
「ごめん! 急用! 私に用事がある人いたら、花畑にいるって伝えて! あと一人で平気!」
「ちょっ! マリア様!」
あたふたとしている使用人を部屋の前に置いてけぼりにし、私は一人で花畑まで走った。
これじゃ護衛をつけた意味がないだろ、と後でアルに怒られるのは仕方ない。
昨日私が助かったのは、ラナおばさんのお陰。
おばさんに一刻も早く、無事な私の姿を見せに行きたかったのだ。
昨日の凍えるような寒さは消え、今日は太陽が笑っている。
優しい風に揺れる花に囲まれながら、おばさんは水やりをしている最中だった。
遠目から声をかけようとした時のこと。
「マリア。来ると思ってたわ」
私を待っていたかのように、リリーとロイが庭の入り口に立っていた。