悪役令嬢、乙女ゲームを支配する
マリアはアル王子を追いかけ回し、他の令嬢と共に可愛いリリーをいじめるボス。
最後どうなったのかは……やってないからわからないけど、優しいリリーと正反対で腹黒く性格の悪い、男キャラからも嫌われる運命(になる筈)のキャラ。
――つまり私は。
嫌われていい……いや、寧ろ嫌われるべきポジション。
前みたいに作られた聖母マリアとは真逆。人に好かれ、敬われるようにしなくたっていい。
嫌われれば鬱陶しい男共は近づいてこないし……最高じゃない!
念願の、好き放題生きられるってのはこのことよ!
「ホーホッホッホッホ!」
想像の何倍も最高の人生を送られそうな喜び。そりゃあ悪役みたいな高笑いもしてしまう。
今日はここ最近で一番気分がいい。今なら本心から誰にでも優しくできそ――あ、悪役だからしないけど。
「ねえ、先客さん? 貴女もこのお花畑に来たことがあるの?」
トントンと遠慮がちに肩を叩かれ、振り返るとそこには私に向かって笑いかけるリリーがいた。
「い、いや、私は初めてで」
「じゃあパーティーに呼ばれた子ね! わたしはリリー・ホワイト。リリーって呼んで」
あ、もう勝手にそう呼んでます。 そんなことよりリリーと話せる日が来るなんて……!
「私はマリア・ヘインズ。マリアでいいわ」
「よろしくマリア! 嬉しい。女の子の知り合いが一人もいなくて心細かったの。わたし達お友達になりましょう」
とも、だち?
友達ってこんな簡単になれるものなの?
思えば私、友達ってちゃんと呼べる人が真莉愛の頃はいなかったな。私は悪役。 リリーと友達になるなんて――