悪役令嬢、乙女ゲームを支配する
「二人共、仲良くなるのはいいけどそろそろ部屋に戻って身だしなみ整えなさいな」
ラナおばさんにそう言われ、私とリリーは「はーい」と声を合わせて返事をすると二人で顔を見合わせて笑い合う。
「行きましょう、マリア」
リリーに手を差し伸べられ、小さくか弱いその手を掴もうとした瞬間――私は見つけてしまった。
さっきおばさんが言っていた青い花が、リリーの足元にあるのを。
『踏み潰されてって……もう僅かしか咲かなくなってね』
おばさんの声が頭の中でリプレイする。
――このままじゃ、リリーが踏んでしまう。
私は咄嗟に、掴んだリリーの手を自分の方に引くと、思ったより軽かったリリーの身体は前のめりに倒れてしまった。
「リリー! ごめん、だいじょ――「何をしている!」」
私の声を遮って、一人の男がリリーの元に駆け寄る。
「ご無事ですか。リリー様」
優しくリリーの肩を抱き心配そうにリリーを見つめた後、キッと鋭い瞳で私を睨みつけた。
「……貴様、わざとリリー様を転ばせたな」
「はぁ!? そういうつもりじゃ」
「言いがかりはよせ! 私は見ていたんだ。貴様が手を引いたのを」
「……っ」
確かにそうだけど――リリーを転ばせたくてやったわけじゃない。
「やめてロイ。誤解よ」
「ですがリリー様」
「軽く倒れただけよ。擦り傷一つないわ。わたしは平気だからマリアをこれ以上責めないで」
「……心優しいリリー様に感謝しろ。この件は私の口から王子に伝えさせてもらう」
王子にって、そんなの伝えたら好感度ダダ下がり……え、好都合なんですけど。
でもリリーに誤解されるのは悲しいし辛い。