悪役令嬢、乙女ゲームを支配する
悪役達の裏側

 あの後、だだっ広い城内の長い廊下をウロついていると城の使用人らしき人が丁寧に私の部屋まで案内してくれた。
 城と繋がった建物はまるで豪華ホテルのようになっていて、たくさんの部屋がズラーっと並んでいる。
 
 部屋の中は広くもないが狭くもない。一人で泊まるには十分な環境だ。

 私の部屋にはマリアの私物と思われる大きなバッグが置かれていた。
 中を漁ると数日分の洋服やドレス――下着も入っている。
 シルクの下着を両手に取り広げてみると、あまりの面積の小ささに思わず噴き出した。
 マリア、あんた一体何で勝負しようとしてたのよ。

「あ、これ……」

 その中に二枚の封筒が入っているのを見つける。
 一枚には“招待状”と書かれており、もう一枚には何も書かれていない。
 何だろうと思いながら、とりあえず招待状の中身を確認すると、さっきリリーから聞いた内容と同じことが書かれていた。

 招待状を一旦近くにあるテーブルに置き、今度は何も書かれていない方の封筒を手に取る。
 封は既に開けられていて、中には一通の手紙が入っていた。

【マリアへ】

 お前も薄々わかっているとは思うが、世間からのイメージと違いヘインズ家は今大変苦しい状況にある。
 この状況を変えるにはお前がアル王子と結婚し、オーズリー家の手を借りるほかない。やっとお前が家の役に立つのだ。
 いいな、マリア。
 何としてでも王子との結婚をお前のものにするのだ。手段は選ぶな。邪魔なものは排除しろ。
 そうすることがお前の幸せであると同時に、ヘインズ家の幸せでもある。

 誰よりも美しく強いマリア。
 お前なら王子の心なんて簡単に掴むことができる筈だ。
 私達はそうやってお前を育ててきた。
 もし結婚を手にできなければ、もう顔を見せることは許されない。
 
 これからもマリアと共に幸せに、裕福に生きていける未来がくることを祈っている。

< 16 / 118 >

この作品をシェア

pagetop