悪役令嬢、乙女ゲームを支配する
王子様<肉

 扉を開けると、そこは見たことないくらい煌びやかに輝いていた。
 景色が、空気が、人間が。
 あるもの全てキラキラとした光を放っているように見える。
 
 ――これがお城。これが王家。そしてこの場に選ばれし精鋭達。

 真莉愛として生きていても、ここまでのところには来れなかっただろう。

「パーティー参加者のお嬢様達ですね。ディナー会はもう始まっています。そろそろ王子がお見えになるので、どうぞお早めにお席に着くようお願い申し上げます」

 深々と頭を下げるベテラン執事のようなおじいちゃん使用人。
 辺りを見渡せばテーブルには既に美味しそうな料理が並んでいる。
 てっきりバイキング立食形式なのかと思いきや、一人一人にちゃんと料理が運ばれてくるようだ。さすがディナー会というだけはある。
 
「マリア! こっち!」
「――リリー!」

 空いている席を探していると、私を見つけたリリーが笑顔で手招きをしていた。
 私はすぐリリーのところまで行き隣に座る。
 ジェナとジェマはそんな私の様子を見守ると、二人で別のテーブルの方へ歩いて行った。

「遅かったわね。何をしていたの?」
「ちょっと道に迷っちゃって……お城ってこんなに広いのね」
「そうだったの!? 一緒に行けばよかったわ。マリアが来るまで誰もわたしの隣に来ないんだもの。ずっと寂しい思いをしてたのよ」

 言われてみれば、三、四人は座れるテーブルにリリーはポツンと一人で座っていた。
 ……もう既に、他の女達のリリーに対する嫌がらせは勝手に始まっていたみたいだ。
 
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