悪役令嬢、乙女ゲームを支配する
辛そうなリリーの役に立てないかと考えていると、私はあることを思いついた。
自分のお皿にあった最後の一切れを勢いよく食べ終えると、私は身体ごとリリーの方に向き直し口を開く。
「いい? リリー。今から私が言うことをよく聞いて」
「――マリア?」
「さっきの花畑でのことも……わざとじゃないの。本当よ」
「ええ。そんなことわかってるわ」
「私はこれからリリーを守る為にリリーにわざと嫌がらせをする――フリをするけど」
「え?」
私はリリーの手を取ると、ぎゅっと強く握った。
「全部リリーの幸せの為なの。――だから私のこと嫌いにならないで、友達でいてくれる?」
リリーは少しだけ驚いた顔をした後――ぎゅっと手を握り返しこう言った。
「詳しいことはわからないけど……当たり前じゃない。わたしとマリアは何があっても友達よ」
「よしっ! ありがとリリー!」
リリーの言葉を聞いた私は、すぐに作戦を実行へと移す。
テーブルの上にあったタバスコを、わざとリリーの肉料理の上に大量にこぼしたのだ。
「マリア!?」
突然すぎた私の行動にリリーは驚き大きな声を上げる。
何事かとこちらを見た人達がみんな真っ赤な肉料理を見てぎょっとしていると、料理を運んでいた一人の使用人が慌ててこちらに駆け付けた。
「ああ、これは人数分しか用意していなかった今日の為だけに用意した特注の肉……もう作り直しができないのに」
頭を抱える使用人。
続いてずっと私達を見張っていたであろうロイも血相を変えすぐに一人の男を連れてやって来る。
「リリー様に何をしてくれたんだ」
「仕方ないでしょ。わざとじゃないんだし」
「いいやわざとだ。ハロルド様、この女はさっきもリリー様をわざと転ばせました。これ以上また危害を加えられてはたまりません」
ロイの横に立つ青髪の男が、切れ長の鋭い瞳で冷たく私を見下ろす。