悪役令嬢、乙女ゲームを支配する
両親は忙しくてほとんど家にいない。
無駄に広い家に一人。お手伝いさんを雇うお金があるのに雇わず家のことは私任せ。
“将来いい男のところに嫁ぐなら料理も掃除もできるように”なんて一つもできない母が何を言ってるんだろう。
最初は真面目にやってたけど最近は遅い反抗期なのか逆に散らかすようになった。
綺麗な広い家より、少し散らかってたくらいの空間の方が居心地がいい。料理は自分の為に仕方なくやっている。
イケメンな父。美人な母。他にあるのはお金を稼ぐ力だけ。性格はクソ。
母なんて父のお金であちこち遊び回って最早顔しかない。
金持ちのお嬢様に可愛い子が多いのは、金持ちが結婚相手に美人を選ぶからだ。
頭の良さも性格の良さも関係ない、隣に置いておくと見栄えのいい美人を。
結果子供もそれなりの容姿になるに決まってる。
そしてもちろん、娘である私の性格もクソなのは仕方のないことだった。
毎日毎日偽りの笑顔と優しさを振りまき作られたイメージの私を演じる。
いや、周りが私にその演技を強制させるのだ。
「いい子」「すごい」「完璧」
言われ過ぎて、そうじゃない私はいらないんだと思うようになった。
偽りの私を求め、もてはやす男共が大嫌い。そもそも男が嫌い。好かれたくもない。
加えて馬鹿じゃない私は知っている。女の子達からは好かれているようで本当は嫌われてること。
――当たり前よね。女っていうのは基本自分が一番可愛くて、身近にいる自分よりも上に感じる人間が心のどこかで絶対に気に入らない。
芸能人になると住む世界が違うから尊敬や憧れって感情にシフトできるけど、身近な存在になると必ず妬み嫉みといった負の感情が渦巻く。
影で悪口を言われているところに遭遇したことだって何度もある。彼女らもまた偽りの仮面を被り、私の前で笑っているのだ。
私は、頭で理解できてもそれが一番悲しかった。
何故なら――私は可愛い女の子が大好きだからだ。
憧れだった。親友の女の子と帰り道お茶をしてカラオケ行っておそろいのもの買って。
よくドラマや漫画で見るその当たり前のことに。
家にいてやることがない私は、よく本や漫画を読んだりゲームをしたり、いつも創作の世界に現実逃避していて、そこでよくある日常の一コマが私にはどんなイケメンからの告白シーンより素敵に映った。