悪役令嬢、乙女ゲームを支配する
「ああ。リリー様は優しさが見た目や雰囲気に出ている。逆にお前は性格の悪さや傲慢さがそのまま表に出てるんだよ」
「え!? 私ってそんなにちゃんと悪女に見えてる!?」
「はっ……? い、いや、そうにしか見えないけど。つーか何だよいきなり」
前までは心でしか言いたいことが言えず、普段は良い子を演じていたから腹の中でどんなにどす黒いことを思っても周りからは天使と言われてたこの私が。
男達からか弱く可憐で純粋な城金さんと思われていたこの私が――今や傲慢性悪女呼ばわりだ。
「人間って面白い生き物ね」
「お前何言ってんだ? 頭でも打ったか?」
「じゃあねノエル。食べ終わったら箱だけ返しに来るわ」
「あっ! おい! 変なことするんじゃねーぞ! 箱も高いんだからちゃんと返せよ!」
うるさい生意気少年ノエルとバイバイし、私はランチボックス片手にとある場所へと向かった。
****
「ラナおばさーんっ!」
着いた先は最初に自分がいたラナおばさんの花畑。
花の世話をしている最中のおばさんに声をかけ大きく手を振ると、私に気づいたおばさんは手を止めて私の元までやって来た。
「マリア! よく来たね」
「おばさん、ここでランチ食べてもいい?」
「それは別に構わないけど……他の子達と一緒に食べないのかい?」
「いいの! お花眺めながら野原でランチなんてピクニックみたいで楽しいでしょ? あ、ちゃんと花がないところに座るから安心して」
私は足元に注意しながら、昨日リリーが踏みそうになった花が無事かどうかをまず確認しに行く。
確かこの辺に――あ、あった!
無事に小さな青い花が吹いてくる風にゆらゆらと揺れている姿を見て、ホッと安堵のため息と笑みがこぼれる。
一安心して受け取ったランチボックスを開けると、中には美味しそうな何種類ものサンドイッチが入っていた。
……ノエルが作ったんだろうか? だとしたらちょっとだけ見直してやろう。
「……美味しい。それに風が気持ちいい」
出禁くらってラッキーだったかも。美味しい空気にサンドイッチに綺麗な景色。
リリーに今日まだ会えてないのは残念だけど仕方ない。にしてもあれだけで出禁になるなんて、確かにリリーに対してはロイだけじゃなく全員が過保護すぎるわね。私も含めて。
一人でそんなことを考えながら呑気にランチタイムを過ごしていると――