悪役令嬢、乙女ゲームを支配する
悪役、ヒロイン、王子、騎士団長のお茶会
空になったランチボックスをノエルに返し、私は自分の部屋まで帰る時間頭の中をとりあえず整理することにした。
ここは私が真莉愛の時にプレイした乙女ゲーム、『もし運』の世界。それは間違いない。
今一番困っているのは、普通は各キャラクターを攻略してエンディングを知っているところなのに私がそれを一切知らないことだ。
だって私はこのゲームを一回も、攻略対象誰一人としてクリアしていないんだもの!
きっと主人公リリーの攻略対象として、アルはもちろん、ハロルド、ノエルもいた気がする。
ロイは知らない。そこまで目立った感じなかったし、目立つ前に私がやめたから知らないだけかもしれない。
物語でいう三分の一くらいしかやらずに放置してしまった為に、私の中ではリリーが可愛かった記憶以外あまりない。
マリアとジェナジェマに関してはネタバレサイトを見て主人公をいじめまくるかなりの腹黒キャラだったという知識を得たレベルだ。序盤の方でも結構嫌がらせされたから悪役って印象は元々強かったけど。
男キャラには興味がなさすぎてネタバレすら見なかった。
でもみんなリリーが好きなのと、リリーを好きになるっていうのは間違いないはず……でしょ?
なのにどうしてアルは私をあんな目で見るのよ。理解できない。
アルがマリアに好意を示すシーンなんて、物語の最初から少なくとも私がゲームをやったところまでは一度もなかった……はず。
どちらにせよ物語を理解してない私にとってこの世界はただの新しい人生の始まりで、事前情報を活かし何かを回避したりする術はない。
逆に私のその知識のなさから好き勝手してる行動によって、この世界の本筋であるストーリーを捻じ曲げることになっちゃったりして……