悪役令嬢、乙女ゲームを支配する

「彼はこの城――いや、国を代表する騎士団長であると同時に、幼い頃からの僕の親友だ。このパーティー期間は城への人の出入りが多いから、僕や城全体の護衛を頼んでいるんだ」
「騎士団長っ!? た、確かにそういえばそうだったかも……」
「ほう。心当たりがあって俺にあの態度を取っていたならばお前のことを褒めてやろう」
「そ、そっちこそもっと騎士らしい格好しときなさいよ! 剣も持ってないし、そんなんじゃピンチの時何もできないじゃない」
「怖がらせるから極力花嫁候補がたくさんいる場では剣は持たず近くに隠しておけという命令に従っているだけだ。それに俺は武術全てを心得ている。なめるなよ」

 またもや鋭い視線で私を睨みつけるハロルド。今までよく一度も投げ飛ばされなかったなと今なら自分でも思う。
 ――ついでにアルの親友でもあるなんて美味しい設定までもらっちゃって。騎士団長って肩書だけでも女はほっとかないでしょうに。
 あ、でも待って。じゃあハロルドは親友のアルの花嫁(仮)であるリリーを実は好きだったってこと? ゲームの話上だとハロルドも攻略できたんだから、そういうことよね? 少なからずリリーに好意があったわけで……
 でも親友の幸せの為に自己犠牲するんだ。うわ、見るからにハロルドってそういうタイプだもん。ちょっと見る目変わってきちゃった。

「……ハロルド。あんたも大変だったのね」
「触るな」

 肩をポンッとすると、凄まじい勢いで振り払われてしまった。

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