悪役令嬢、乙女ゲームを支配する
「……はぁ、いいなぁ」

 そう思い過ぎて声に出てしまったところでメッセージが届く。
 舞からのお礼メール。絵文字満載のキラキラな文章が可愛くておもわずクスッと笑みがこぼれる。

 舞とは知り合ってまだ間もないものの、そんな感じがしないくらい一緒にいて安心感があった。
 身長が高めの自分と反対で小さくて小動物のような舞はそれはもう可愛くて、邪念も全く感じず本当に私に懐いてくれている……と思う。
 私と違い、本当に男女共に人気のある女の子……そんな舞になら、いつかありのままの自分を見せられるかもって希望を最近抱くようになった。

 舞となら、憧れていた“親友”になれるかな、なんて淡い期待を。



****


 
 家でダラダラするだけの休日が終わろうとしている日曜の夜。
 舞の料理がうまくいったか心配しメッセージを送ってみると、いつもと様子が違う返事がきた。
 必ずあった眩しいほどの絵文字は一つもなく、文章だけのシンプルな返事。料理は無事にうまくいったらしい。
 よそよそしさに違和感を感じながら「何かあった?」と返すと返事はなく……

 今まで舞から無視されることなんてなかった私は、不安になり心配であまり眠れず――次の日は随分と早い時間に目が覚めると、そのままいつもより早く学校へと着いてしまった。

 この時間に学校に着くなんて、朝が弱い私には考えられないな。
 なんて思いながら一限目の講義室のドアを開けようとすると、中から女の子数人の話し声が聞こえてくる。

「でさぁ、この料理真莉愛ちゃんに教えてもらったって言ったらそれから彼氏ずーっと真莉愛ちゃんのことばっかり褒めるんだよ」

 ――すぐにわかった。舞の声だ。
 ――私の好きな、高くて守りたくなるような可愛らしい声。

 その声で、私は聞きたくもない現実を聞かされることになる。

「ずっと真莉愛ちゃんと比べられて……もう無理かも。別れそう」

 舞の泣きそうな声が聞こえる。

「だから言ったじゃん。城金さんは本気で仲良くするような子じゃないって」
「そういう狙いだったんじゃないの最初から。男にモテたいだけでしょ。料理できる私アピール」
「あそこまで男に好かれたい人も珍しいよね~」
「舞、いつもご機嫌取りするの嫌じゃなかったわけ?」

 ドクンドクンと自分の心臓の音がやけに大きく聞こえ、舞が次に発する言葉に耳を塞ぎたくなる。
 いや、でも私がここで舞のことを信じないと――


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