悪役令嬢、乙女ゲームを支配する
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「ノーエルッ! 何作ってるの?」
「うわあぁ!? どど、どっから現れたんだお前!」

 私がトイレへ行くふりをして向かったのはノエルがいるであろうキッチン。
 狙い通りノエルはお菓子を作っている真っ最中のようで、ノエルの手には絶賛仕上げ中のシュークリームに入れるクリームの絞り袋が握られていた。

 私はノエルの目を盗みキッチンにとある仕掛けを施すと、既に完成したシュークリームにキッチンに入ってすぐ手に入れておいたブツを取り出し勢いよく中に振りかける。

 そのブツとは、タバスコの何倍も辛いデスソースだ。
 
「おおおおおい! 何してやがる!」

 シュー生地で蓋をしてしまえばバレないよう、強烈なパンチを効かせる隠し味としてデスソースを勝手に入れる私に気づき慌てふためいたノエルは私を止めにかかる。
 が、当然止められるのは計算済み。ここで私の仕掛けの出番だ。

「いいの? あそこの料理焦げちゃうわよ」
「あああ! お前、いつの間に強火にしやがったんだ!」

 別でコンロにかけていた料理鍋から焦げた匂い。
 急いでノエルが私から離れ火を止めている間に、私はデスソース入りと普通のもの、合計四つのシュークリームを持ってテラスへと走った。


「ねえ! ここに戻って来る途中ノエルに会って出来立てのシュークリームを人数分もらったの! みんなで食べましょう!」

 テラスに着いた私は早速シュークリームを四人に手渡す。
 この中でデスソース入りは一つだけ。
 アルかハロルドどちらかに当たるよう計算して手渡し、何も知らないアホ二人は疑うことなくシュークリームを口に運んだ。
 私もどっちに当たるかを楽しみにしながら普通のシュークリームをぱくりと一口。
 う~ん! クリームが甘すぎなくて美味しい! やっぱりノエルの腕は確かなようね。

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