悪役令嬢、乙女ゲームを支配する
「だって真莉愛ちゃん、一緒にいるぶんにはすっごく優しいし、利用できるって思ったんだよね。いい思いできるかなって。イケメンの金持ち紹介してもらったりとかさ」
「舞悪女すぎ~!」
「あはは! 真莉愛ちゃんみたいに男に媚びる女無理に決まってんじゃん」
――気が付けば、私は教室を後にしていた。
「はは……はは、は」
勝手にこみ上げる、乾いた笑いの意味は何だろう。
舞が私を好きでいてくれるなんて思い込んでうぬぼれていた自分への嘲笑か。
自分の目に映るイメージだけ信じて中身が全く見えてなかったなんて、所詮私も他の奴らと同じだ。
本気で仲良くするような子じゃない? 利用できる?
知ってたよそんなこと。今までだって何度も言われてきた。わかってた。舞もそうだっただけの話。
でも――私がいつ男に好かれたいって言った? いつ自分から媚びを売った?
向こうが頼んでもないのに私をちやほやするだけで、私はそんなの求めたこと一度だってない。
私はただ、自分らしくいられる場所が欲しかった。
自分が自分でいられる時、隣で一緒に笑ってくれる人が欲しかっただけなのに。
行き場のない気持ちと同じで、あてもなく歩く。
どうしよう。どこに行こう。家に帰ろうか? 私が唯一仮面を外せる場所に。ひとりぼっちで。
また漫画を読んでゲームをして、空想に浸っていれば気が紛れるだろうか。でも現実は変わらない。私はいつまで仮面を被り続けるの?
この世界で――外す勇気なんかないくせに。