悪役令嬢、乙女ゲームを支配する
酔いと嫉妬と、そして

 今宵も飽きずに開かれるパーティー。飽きずに大広間に集まる令嬢達。
 今日のパーティー内容は、アルと二人きりできちんと過ごす時間が一人一人に設けられるという内容だった。

 順番は早い者勝ちらしく、アルが現れた瞬間にできる長蛇の列。
 
 二人きりになる必要性を特に感じない私はジェナジェマの後押しをして、一人列に入らずワインによく似た色の葡萄ジュースを飲んでいた。
 今日も広間に着く前にジェナジェマに散々昨日のことを問いただされた。
 ジェナには「どうやってリリーから自分に気を引いたんですの!? 何かトリックがあったんですの!?」と。
 ジェマには「騎士団長様と踊れなかったぁ~っ! マリアが団長様を怒らせたからだよぉ~っ!」と。

 確かに昨日は特にリリーに嫌がらせする素振りも見せず、ただただ王子と踊り騒ぎを起こして退場しただけで、リリーと王子の結婚妨害を自分に任せろと口火を切った割に情けない結果になってしまい二人が不満を持つのは仕方ないと思う。ジェマは完全に目的が変わってる気がするけど。

 どうやって二人を納得させようか悩んでいる最中に使用人から発表された今日のパーティー内容。これには本当に助けられた。
 逃げるが勝ち、という言葉がすぐ頭をよぎった私は「私はいいから二人が王子にアピールして!」とジェナジェマを列に並ばせ自分と距離をとらせることに成功し今に至る。
 
 葡萄ジュースのおかわりを取りに行く途中に見つけたお気に入りのノエルが作ったシュークリームを椅子に座り食べていると、ノエルが両手に食器を抱えながらこちらにやって来た。

「いい趣味してんな」

 ノエルの唐突な謎発言に私はぽかんとする。
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