悪役令嬢、乙女ゲームを支配する
今日から『マリア』
「ん……」
意識を取り戻し起き上がると、辺り一面綺麗な花が咲いている。
「――天国?」
目をぱちくりとさせながら自分の身体を見ると傷一つない。それどころか豪華なドレスを纏っている。
「は? え?」
周りの建物……いや、全体的な雰囲気もどこかおかしい。
間違いなく言えることは、今まで私がいた世界ではないということ。
……天国でもない気がする。死んでる感じしないし。
――もしかして私、生まれ変わった?
髪の毛も長くなってるし……む、胸もかなり大きくなっている。上から見下ろすと今まで見たことのない自分のであろう谷間が視界にドーンと飛び込んできた。
よくわからないけど、ここには私の知ってる人はきっといない。自分の姿も違うんだから私は最早私じゃない――つまり。
私は解放されたんだ。作り上げられた“私”という虚像から。
「……やったぁぁあーー!」
喜びの声を上げ、私はそのまま倒れるように野原に寝転がった。
草の香りが気持ちいい。今までじゃ服の汚れやキャラを気にしてこんな小さなことすらできなかったのに。
「こら! そこに寝そべるんじゃないよ! みっともないねぇ。お嬢様だってのに」
すると突如近くから怒鳴り声が聞こえたかと思うと、緑と戯れる私の前に、綺麗に髪の毛を後ろで低めのお団子にまとめお洒落なロングワンピースを着たおばあさんが立っていた。
――私、この世界でもお嬢様のままなのか。こんなドレス着てるんだしちょっと勘付いてはいたけど。
「いいじゃない。お花咲いてるとこにダイブしたんじゃないし」
とりあえず目の前で眉間に皺を寄せるおばあさんに自分も眉間に皺を寄せ言い返すと、おばあさんは私の言葉を聞いて大きなため息を吐いた。