悪役令嬢、乙女ゲームを支配する
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 空腹が満たされたからか、急に昨日訪れなかった睡魔が私を襲い部屋で爆睡しているとすっかり日は落ちていた。
 部屋に籠っていたせいもあり、今朝ジェナジェマに会った以外今日は誰にも会っていない。

 パーティーに行くとアルはもちろん、リリーもジェナジェマもいる。

 全員に対して複雑な心情があり、私はパーティーに行くのが億劫になっていた。
 行っても自分がやるべきことがわからない。好き放題すると意気込んでいたのに今私がしたいことが何なのかも見つからない。

 顔を洗って時計に目をやると、ちょうどパーティー開始の一時間前。
 ドレス選びも気が乗らず、寝巻にしていたAラインの白いコットンワンピースを着たままドレッサーの前に立つと突然聞こえてきた部屋のドアをノックする音。
 
 昨日に続いてまた訪問者とは――勝手に人の部屋を教えるなんて個人情報ゆるゆるじゃない。それとも城の関係者?
 足取りが重いまま、特に深く考えずドアを開けると、昨日と全く同じ光景。

「――アル!?」
「しーっ! 大きな声出さないで」

 アルは私の唇に人差し指を押し当てる。

「ご、ごめん……ていうか何? その格好」
「これ? 似合ってるだろう?」

 よく見るとあった昨日と大きく違う点。
 アルは何故か使用人の制服を着ていて、王子というよりは執事だ。今日はコスプレパーティーでもする予定だったのか。

「そんなことよりどうしたの? あと一時間後にはパーティー始まるじゃない」
「だから今来たんだ。マリア、今から僕とデートしないか?」
「……デート? って、ちょっと!」

 アルは私の腕を掴み強引に部屋から出すと、そのまま廊下を走りだす。

「とにかく着いて来て! 話は後から!」

 どすっぴん寝巻姿でどこに行くのかもわからないまま、私はアルに連れ出されてしまった。
 
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