悪役令嬢、乙女ゲームを支配する
私は抵抗することなく、アルの背中にぎこちなく腕を回した。
一度目にされた時のような不快感は何もない。
寧ろ“もっと”とねだってしまいたくなるくらい、アルとのキスが気持ちいい。
名残惜しく離れた唇からは吐息が漏れ、、お互い物足りない顔のまま見つめ合う。
これ以上続けると歯止めが効かなくなることを、私達はわかっていたのだ。
「大好きだ。マリア」
「――うん」
私も、貴方が好き。
自分がやっと認めたその感情は言葉に出すことはなく、私は胸の内で小さく呟いた。
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「はぁ……よく寝た」
昨日昼から夕方過ぎまで寝ていたせいか、一人で部屋に戻ってからなかなか眠れず今日の目覚めは昼過ぎだった。
――アル、昨日大丈夫だったかな。
私はパーティーに参加しなかったから、昨日アルがあれからどうなったか知らない。
会った際に聞けばいいか、と思い私は大浴場に向かうことにした。時間はあったのに部屋から出るのを躊躇いお風呂に入らず寝てしまったので髪の毛がちょっとだけパサついている。マリアのロングヘアーは手入れが大変だ。
部屋を出ると、ちょうど今まさに私の部屋に来ようとしていたであろうジェナジェマと鉢合わせした。
昨日少し気まずい感じになった二人と目覚めてすぐ顔を合わせることになるとはツイてない。
そういえば、二人はともかくリリーとは昨日一度も顔を合わせていない。
アルのことを好きかどうか聞いてから話さなくなるなんて、明らかに私が避けてるとリリーに勘違いされてないだろうか……