悪役令嬢、乙女ゲームを支配する

 あの手紙は、私の部屋に入らないと絶対に盗めない。
 誰かが私を邪魔者だと判断し陥れる為にやったことなら、手紙を盗めたのは昨日私がアルと物置部屋に行っていたあの時間だけ。

「――リリー?」

 ジェマが言っていたことを思い出す。
 
『そしたらリリーがマリアの部屋の近くをうろついてたんだぁ~っ』

 リリーは、私の部屋に来て何をしていたの?

「……まさか、はは。リリーがそんなこと」

 それだけは考えたくない。
 リリーはさっきも私を助けようとしてくれた。これまでもずっと、私はリリーの笑顔を見るだけで幸せだった。
 アルに私が気に入られてるからといって、リリーはこんなことをするような人間じゃない。

「はは。でももうどうでもいいか」

 考えてると、段々馬鹿らしくなってきた。
 一人で疑心暗鬼になって勝手に不安になったって、もうどうしようもないところまできている。
 私は明日になったら城を追い出され、もう二度とアルにもリリーにも会えないかもしれない。
 知らない世界で、また一から始める以外の選択肢は私に用意されていない。

 その時、私は城のある人物のの存在を思い出した。

「そうだ、ラナおばさんっ……!」

 この『もし運』の世界に来て初めて出逢った人。
 最後にもう一度会いたい。
 会って謝りたい。青い花をパーティーが終わる最後まで守り切れなかったこと。

 ――どうせなら最後にゲームの時みたいに好感度でも聞いてみようかな。今聞いたら全員最低最悪だろうし、その前にラナおばさんの頭にハテナマークが浮かんで終わりだろうけど。

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