悪役令嬢、乙女ゲームを支配する

 ――早くラナおばさんに会いたい。おばさんなら、こんな私を嫌わないでいてくれている。
 
「マリア! 心配したんだよ!」

 私の見る目は正しかったようで、おばさんはドレスを着て急に花畑に現れた私を見るなりすぐに駆け付け、私より小さな身体全身で温かく包み込んでくれた。


「……話、聞いたよ。政略結婚がどうとか。辛かったねぇ。マリアのせいじゃあないのに」

 今日は外は寒くなるから、とラナおばさんは私を部屋に招き入れ、またハーブティーを淹れてくれる。

「いいの。手紙は本当のことだから。最後におばさんに会えてよかった。それと――ごめんなさい。おばさんの花守る期間、短くなっちゃった」
「何言ってんだ。マリアには十分感謝してるよ」
「――おばさん、私ってね、最低なの。最低の女」
「マリア……」

「さっき――アルと笑ってるリリーを見た時、もしリリーがいなかったらって思った」

 そんな愚かな考えが自分の頭を過ったことが信じられなくて、私は罪悪感に苛まれていた。
 大好きな筈なのに、リリーのことが。でも思ってしまった。
 きっと……舞も私にこういう気持ちを抱いてたんだ。

 今にも泣きそうになっている私を見て、おばさんは全てを悟ったように言う。


「素直になりなマリア。まだ小娘なのに強がんなくていいんだよ。あんたが政略結婚目的じゃなかったことくらい、見てたらわかる」
「…………」
「好きなんだね。アル王子のこと」

 私は涙を堪えながら言葉に詰まり、首を縦に振ることしかできなかった。

「じゃあどうして王子に嘘をついたんだい。アル王子ならマリアが言ったら信じてくれたよ。他の誰が何を言おうと」
「だって、私はアルの相手じゃなかったから。リリーがいるから、私がアルと結ばれる未来なんて、元々なかったのに」

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