悪役令嬢、乙女ゲームを支配する
「ははは、はは……」
結局この世界でも私はまんまと一時でも信じた人が自分に見せる嘘の好意に騙され、裏切られ、自ら身を滅ぼしかけて。
ちゃんとした友達ができた気だけして――結局友達も作れなかった
リリーがいなければ、なんて最低なことを思った私に今更リリーを友達なんて呼ぶ資格はない。
ジェマが言っていた“自業自得”という言葉は、本当に今の私にこれ以上ないくらい似合いの言葉だ。
悪役令嬢になることを望んだくせに、私は悪役令嬢になりきれなかった。
結局みんなと同じ、いつの間にか私はただの王子に恋する一人の女に成り下がっていた。
悪役を演じきれなかったマリアは、この世界にはいらなかったんだ。
「……どうせ、こうなるなら、素直になればよかった」
せっかくラナおばさんが私に後悔が残らないよう後押ししてくれたのに、それを無駄にしてしまった。
「……言えば、よかった」
全身が冷たくなり、声を出すのも限界に近付いている。
いや、声だけじゃない。私の全てが限界だった。
視界が霞んでるように感じる。真っ暗だから、目を閉じてるのか開けてるのかもわからなくなる。
でもここで閉じて、眠ってしまったら。きっと私は。
ああ、まだ死にたくない。だって、まだアルに伝えていない。
「ちゃんと、すき、って」
自分を抱きかかえるようにしていた腕の力が抜けていく。
とんでもない眠気が襲い、遠のいていく意識の中で――アルが私を呼ぶ声が聞こえた。