半神
 
「そんな……」

ノートの表面をなぞっていた僕は指をゆっくりと握り締める。

手のひらに爪が食い込んでいく痛みに、僕は目の前で起こっている事が紛れもない現実なのだと思い知らされていた。

ノートに書かれていた文字は、『大気圏の呪縛(仮題)』から始まり、メイン登場人物の名前と年齢、人物相関図、話の概要が書かれてある。とりあえず思いついたネタを忘れないようにと慌てて書きとめたものだった。

僕は困惑していた。

今まで僕は自分が小説の原案を書き溜めている事を誰にも話した事がない。もちろん夕べ書いたそれも自分以外知る者はいない筈だ。

それなのに、どうして彼は自分が考えたストーリィを知り得たのだろう?なぜ彼の発表している小説のすべてが、自分のこのノートの中身と気味の悪い位に合致しているのだろう?……僕は得体の知れない不安を感じ、ブラウザを閉じ改めてノートの1ページ1ページを読み返した。



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