半神
どの話もいつか小説にしてやろうと逸る気持ちを抑えながら書いたものだった。次々に湧き上がってくるキャラクターのイメージを細かく書き、彼らが活躍する世界を構築していった。いつか彼らを思い切り文章で動かしてやるんだ、と。
それなのに……。
僕は顔を上げ、モニター画面の中で生き物のように蠢くスクリーンセイバーの規則正しい動きをぼんやりと眺める。
ネットの中で、見ず知らずの彼によって発表され絶大な人気を得ている『僕の作品たち』……。そう思うと無性に遣り切れない思いが僕の中に沸き起こり、気がつくと僕は力まかせにノートを壁に叩きつけていた。
僕がこれからプロットを元に小説を書いて発表したとしても、自分の考えたアイデアでありながら『盗作』と後ろ指をさされてしまう事になる現実が、僕を不条理な闇へと落としていった。
それから数日……、僕は引き出しの奥にしまったノートを開く事はしなかった。
書きかけのプロットの続きを考える気持ちすら起こらず、魂のどこかが欠けてしまったように僕は無気力になっていた。
『……彼はどうしているだろう』
ふと、そんな思いが僕の心に過ぎる。