Bon anniversaire
その男子は、伯だ。麗愛は慌てて隠れ様子を伺う。

「あんな地味な子、全然伯くんに合わない！私の方がずっときれいよ！」

どうやら、告白されて伯は女子を振ったようだ。それが気に入らなかったらしい。女子はとても怒っている。

「ズルい！！私、あなたが高校に入学した時からずっと好きだったのに！！」

女子にそんなことを言われ続けても、伯は顔色一つ変えない。それが麗愛を安心させた。

「あんな子、本当は彼女じゃないんでしょ！？」

ズキン、と麗愛の胸が痛む。やはり伯と付き合っているということに不満を持っている人はいたのだ。

伯の答えを、麗愛は緊張しながら待つ。伯はゆっくりと口を開いた。

「そうだ、彼女じゃない」

どうやって家に帰って来たのか、麗愛は覚えていない。ただ気がついたら家にいて、呆然としたまま椅子に座っていた。

「彼女じゃない」

そう伯に言われたことがショックだった。あんなにときめいたのが全て嘘だったかのように、伯ははっきりと言った。
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