Bon anniversaire
頰に、涙が伝う。夢のような関係があっさり壊れたことに、麗愛は悲しみしか感じられない。

ただ、声を殺して麗愛は泣き続けた。



次の日、麗愛は学校を休んだ。伯に会うことも、学校の誰かに会うことも、麗愛にとって怖かった。

麗愛は何をするでもなく、一日中ベッドの中で過ごした。いつもはきちんとする身だしなみも、今日はどうでもいい。

その日の夕方、お母さんが麗愛の部屋のドアをノックし、言った。

「麗愛、伯くんが来てくれたわよ」

その言葉が、これほどまでに突き刺さったことはない。いつものようなふわふわした感情よりも、恐怖が麗愛を支配する。

「麗愛、入ってもいいか?」

伯のどこか心配げな声。彼女じゃないのになぜそんな演技をするの、そう麗愛は言いたくなった。

「ダメです!入らないで!」

自分でも驚くほどの冷たい声…。麗愛はそっと口元に手を置く。

「……そうか。明日は、学校来いよ」

そう言って伯は帰ってくれた。

伯のことは、親には何も言っていない。そのためお母さんから「どうしてあんな態度だったの?」と質問を受けたが、麗愛は答えなかった。
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