Bon anniversaire
顔を赤くする麗愛に、伯はそっと近づく。そして麗愛を抱きしめた。

「えっ!?は、伯先輩…」

キスやハグを伯からされているとはいえ、突然のことには驚く。

「聴いて、俺の音」

伯の言葉に、麗愛は耳に意識を集中させる。ドキン、ドキンと早い鼓動が二つ、麗愛の耳に届く。

その鼓動は、きっと麗愛と伯のものだ。二人の鼓動が混じり合い、どちらの鼓動なのかわからなくなっていく。

「ね?ちゃんとドキドキしてるでしょ?」

離れると、伯は麗愛に目線を合わせて笑う。

「ちゃんと麗愛のこと、大好きだよ。ちゃんとドキドキしてる。だから悩まなくていいよ」

「うん…」

「さあ、帰ろう」

伯が大きな手を差し出す。麗愛はゆっくりと自分の手を差し出し、握る。二人は再び歩き出した。

たわいもない話をしているうちに、家に到着する。どこの家からもおいしそうな匂いが漂っている。

「今日、俺の家はポトフだよ。麗愛のところは?」
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