愛を捧ぐフール【完】
プロローグ
私には、婚約者である伯爵がいる。
彼には、婚約者である公爵令嬢がいる。
男爵令嬢の私と王太子の貴方。
そんな私達は誰にも言えない秘密の関係である。
「やぁ、僕のクラリーチェ。久しぶりだね」
「ファウスト様……。また来られたのですか?」
私の住んでいる家の窓から、爽やかな微笑みと共に侵入してきた緩いウェーブのかかった金髪碧眼の美青年。ーーファウスト様はこの王国の第一王子であり、王太子である。普通だったらお話することすら恐れ多い。
勿論、しがない男爵の愛人の子供である私が住む家にファウスト様が忍び込んで来るなんて、到底褒められた事ではない。
そんな彼は私のいつもの困惑に構うことなく、私の手を取り、甲にキスをひとつ落とした。
社交界の時期、貴族は王都に住まいを移すが、それ以外は領地で過ごす。
勿論私も例外ではなく、今はお父様と正妻と異母兄妹と王都に来たばかりだった。
愛人である私のお母様はとうの昔に亡くなっており、愛人の子供である私は王都のお屋敷でも領地のお屋敷でも一人離れで暮らしている。まるで鳥籠のような部屋だった。
義理の母である正妻が私と同じ所に住みたくないそうだ。当たり前だろう。夫の浮気相手の子供である。
彼には、婚約者である公爵令嬢がいる。
男爵令嬢の私と王太子の貴方。
そんな私達は誰にも言えない秘密の関係である。
「やぁ、僕のクラリーチェ。久しぶりだね」
「ファウスト様……。また来られたのですか?」
私の住んでいる家の窓から、爽やかな微笑みと共に侵入してきた緩いウェーブのかかった金髪碧眼の美青年。ーーファウスト様はこの王国の第一王子であり、王太子である。普通だったらお話することすら恐れ多い。
勿論、しがない男爵の愛人の子供である私が住む家にファウスト様が忍び込んで来るなんて、到底褒められた事ではない。
そんな彼は私のいつもの困惑に構うことなく、私の手を取り、甲にキスをひとつ落とした。
社交界の時期、貴族は王都に住まいを移すが、それ以外は領地で過ごす。
勿論私も例外ではなく、今はお父様と正妻と異母兄妹と王都に来たばかりだった。
愛人である私のお母様はとうの昔に亡くなっており、愛人の子供である私は王都のお屋敷でも領地のお屋敷でも一人離れで暮らしている。まるで鳥籠のような部屋だった。
義理の母である正妻が私と同じ所に住みたくないそうだ。当たり前だろう。夫の浮気相手の子供である。
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