愛を捧ぐフール【完】
 部屋に残ったクリストフォロス様は私の寝台の側の椅子に座り、男らしく骨ばった手を私の頬にあてた。


 クリストフォロス様は私の頬の熱さに、一瞬びっくりしたかのように、手を引っ込めようとした。だけど、私は手の冷たさがとても冷たくて、擦り寄ったのを見て無言でもう片方の手も反対側の頬にあてる。


 不安そうに揺れる薄氷色の瞳が私をじっと見つめる。
 私は自分の手を伸ばして、クリストフォロス様の頬に手をあてる。いつの間にか彼も随分とやつれて痩せ細っていた。


「クリストフォロス様」

「ん?」

「……だきしめて、ください」


 クリストフォロス様は少し考えた末に、私の頬から手を離し、寝台に上がってきた。そして胡座をかいて私をおそるおそる横抱きにして、その上に乗せた。包み込むようにして抱き締められる。


 クリストフォロス様の胸に顔を埋めて、余計な身体の力が抜けて私は一息ついた。どうしようもなく、彼の傍は安心する。ここにちゃんと私が存在しているような感覚になる。
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