愛を捧ぐフール【完】
「そうですか。それなら、次に会った時にちゃんと謝れますね。エレオノラ様も、陛下も、ちゃんと生きてますから」

「ええ。ええ……ちゃんと謝れるわ」


 謝って、それから……謝ってどうなると言うのだろうか。その先への展望は全く見えないけれど。


 それでも、死が目の前で立ちはだかっていた前世むかしはもう終わった。私には、まだまだ先の長い未来が待っている。


 少しだけ、我が儘を言っていいのだろうか。


 ファウスト様と幸せになりたいって、実現しなくてもいいからその願いを。


「ありがとうイオアンナ。私、貴女と再会出来てよかったわ」

「ええ、私もです。エレオノラ様。私は昔からずっとエレオノラ様の幸せを祈っております」


 居住まいを正したイオアンナは私の顔を見て、泣き跡をどうにかしないといけませんねと苦笑した。


「それなら家から付いてきた侍女がいるわ」

「では侍女を呼んできましょう。私はそろそろ戻らなければなりません」

「ありがとう。……あ、最後に1つだけ」

「なんでしょう?」
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