愛を捧ぐフール【完】
 私の口を手のひらで塞いだフォティオス様は、げっそりとしたような、呆れたような表情でポツリと呟いた。


「そうか、そんなに幸せそうならよかった……」

「むぐぐ……」


 不満そうな私の声を察したらしいフォティオス様はゆっくりと私の口を塞いでいた手をどけた。


「それにしても、エレオノラ様は最初私の事が分からなかったみたいですけど、何でですかね?」

「さあな。ファウスト殿下も俺の事、最初誰だか分からなかったみたいだし、普通なんじゃないか?」

「私はエレオノラ様の事分かりましたよ!だって、エレオノラ様とクリストフォロス陛下は私の憧れでしたもん!私が死ぬ間際まで色々思ってましたし!」

「……まあ、それは俺もだな」

「あ、勿論フォティオス様の事も考えてましたよ!フォティオス様はどうですか?私の事考えてました?」


 随分とリラックスした様子だったフォティオス様だったが、私がその質問を出した瞬間、傍から見て分かるほどビシリと固まった。
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