愛を捧ぐフール【完】
「そういうお前はお婆さんだろうが!」

「え、私16歳ですよ?」

「中身の問題だよ!」


 ああ、もう、調子が狂う!と頭を抱えたフォティオス様を笑って見ていた私だったが、そういえばエレオノラ様からの伝言を伝えなければならないな、と口を開こうとした瞬間だった。


「フォティオス様、そう言えばエレオノラ様からーー」

「オリアーナ様っ!」


 焦ったような声で名を呼ばれ、振り向くと栗髪栗目のエレオノラ様の侍女がこちらに駆けてくるのが見えた。


「……あれは」


 エレオノラ様の侍女だと知っているフォティオス様がポツリと訝しげに呟く。


「オリアーナ様。本当にクラリーチェ様はお庭にいらっしゃったのでしょうか?どこにもお姿が見えないのです」

「……え?!」

「……は?!」


 フォティオス様と同時に声を上げると、先程エレオノラ様と別れた場所へと駆け出す。夜会用のドレスが邪魔で思いっきりたくしあげたけど、後から付いてきているらしいフォティオス様とエレオノラ様の侍女だけしかいないので、はしたないとかいうよりエレオノラ様の事しか考えなかった。
< 165 / 285 >

この作品をシェア

pagetop