愛を捧ぐフール【完】
 先程エレオノラ様と別れた場所に来ても、エレオノラ様の姿はおろか人の影すらない。私は必死になって辺りを見回した。


「おい。ここで本当に別れたのか?」


 若干焦った表情で私に聞いてくるフォティオス様に私は頷く。エレオノラ様の侍女は、顔を真っ青にして狼狽えていた。


「ねぇ、貴方が来た時にはもうこの状態だったのね?」

「はい……。オリアーナ様に言われて、クラリーチェ様をお迎えに上がった時にはもう……」

「すれ違ってしまった可能性もあるわね。1回会場の方も探してみましょう」


 フォティオス様に会場の方に向かってくれと頼もうとしたが、先にフォティオス様が口を開いた。


「俺がこの辺りを探す。オリアーナ嬢と……君は会場の方に向かってくれ」

「分かりました」
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