愛を捧ぐフール【完】
愛を乞うフール(ファウスト)
「ファウスト様、報告致します」
執務室に籠って仕事を淡々とこなしていると、急に焦ったような顔をしたラウルが隠し通路から現れる。いつもと違った表情をして膝をつく彼に僕は一抹の不安を感じながら、何があったの?と尋ねる。
「クラリーチェ様に付けていた護衛がやられました……!クラリーチェ様は現在行方不明となっております」
「は?!」
驚きの声と共に手に持っていた書類が折れ曲がる。流石に冷静にならねばと思い、書類を執務机の脇に押しやって僕は頭を抱えた。
「出し抜かれたね……!相手は分かっているのかい?第二王子派?」
「いえ、まだ調査の最中です。夜会の最中に攫われたのではないかと……。ですが、アウレリウス公爵からクラリーチェ様に関してレオーネ男爵家に使者を遣わせているそうです」
「アウレリウス公爵が?第一王子派が何故?」
「どうやら侍女もレオーネ男爵家に帰宅していないようです」
その言葉にクラリーチェの侍女を思い出す。
僕とクラリーチェが会っていることを知っているだろう女は、ただ無表情にクラリーチェと僕の関係を盗み見るだけで、雇用主であるレオーネ男爵には何も報告していないらしい。
執務室に籠って仕事を淡々とこなしていると、急に焦ったような顔をしたラウルが隠し通路から現れる。いつもと違った表情をして膝をつく彼に僕は一抹の不安を感じながら、何があったの?と尋ねる。
「クラリーチェ様に付けていた護衛がやられました……!クラリーチェ様は現在行方不明となっております」
「は?!」
驚きの声と共に手に持っていた書類が折れ曲がる。流石に冷静にならねばと思い、書類を執務机の脇に押しやって僕は頭を抱えた。
「出し抜かれたね……!相手は分かっているのかい?第二王子派?」
「いえ、まだ調査の最中です。夜会の最中に攫われたのではないかと……。ですが、アウレリウス公爵からクラリーチェ様に関してレオーネ男爵家に使者を遣わせているそうです」
「アウレリウス公爵が?第一王子派が何故?」
「どうやら侍女もレオーネ男爵家に帰宅していないようです」
その言葉にクラリーチェの侍女を思い出す。
僕とクラリーチェが会っていることを知っているだろう女は、ただ無表情にクラリーチェと僕の関係を盗み見るだけで、雇用主であるレオーネ男爵には何も報告していないらしい。