愛を捧ぐフール【完】
「レオーネ卿にはセウェルス伯爵と貴女の婚姻を早く結ぶようにこちらから圧力を掛けています。この国でとても力を持つ公爵家の後押しですよ。すぐに貴女は幸せな花嫁になるでしょう」

「……そんなの」


 嫌だ。幸せなんかじゃない。


 花嫁、と聞かされてファウスト様が浮かぶ。
 まだ、彼に何も伝えられていない。何も言えていない。想いに応えられていない。


 それなのに、私はこのままセウェルス伯爵と結婚していいの?


 言い淀(よど)んだ私が次の言葉を発さないと思ったらしいアウレリウス公爵は、ではそういう事でとビアンカを置いて去って行く。

 アウレリウス公爵から遣わされていた侍女は、アウレリウス公爵と共に部屋から出ていった。
 ビアンカと2人きりになってから、私はそっとビアンカに声をかける。


「ビアンカ……。ビアンカも捕まっていたのね。無事でよかったわ」

「ええ。クラリーチェ様もご無事でなによりです」

「夜会の日、イオアン……オリアーナ様と会った?」

「ええ。オリアーナ様とフィリウス侯爵家のサヴェリオ様とお会いして、3人でクラリーチェ様を探しておりました」

「そう……迷惑を掛けたわ……」
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