愛を捧ぐフール【完】
 私、なんでイオアンナが無事だと思い込んでいたのだろうか。


 いや、アウレリウス公爵にとってイオアンナは大事な娘……という感情は無かったにしても、無くすことは出来ない大切な駒である事は間違いないだろう。


 例え私のように軟禁されていたとしても、酷いことはされていないに違いない。


 ……とすると、フォティオスお兄様が心配だが、アウレリウス公爵はわざわざ反対派のフィリウス侯爵家の嫡男を捕らえるだろうか。


 私みたいに同じ派閥の者であれば、このような世間に広まったら不味い後暗い事は隠し通せるが、むしろ反対派の人間は嬉々としてアウレリウス公爵の評判を追い落とそうとするだろう。


 とにかく、フォティオスお兄様も、イオアンナも無事であってほしいとここから願うしかない。


「ビアンカ。手伝って欲しいの。ここから一緒に逃げましょう」
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