愛を捧ぐフール【完】
 手を離してしまうと、もう二度と触れられないのではないかと怯えてしまったから。


 きっとそれは、弱り切った彼女には優しくない願いだったんだろう。


 ずっと握っていた彼女の手は、段々と細くなって枯れ枝のようになってしまった。


 彼女と幸せになりたいと願った気持ちは、沢山の人にどんどん踏み潰されていった。
 他の誰でもない。エレオノラでなければ、その願いは叶わなかったのに。



 たった一つの、僕が望んだ願いだったんだ。



 隣国の王女がこちらに嫁いできてから微妙になっていた僕とフォティオスの関係は、エレオノラの死をきっかけに、破綻した。
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