愛を捧ぐフール【完】
侯爵家という爵位なだけあり、フィリウス侯爵家の邸宅は我がレオーネ男爵家なんか比べ物にならないくらいの大きさだ。ダンスホールもこの王国の王子二人を招けるだけあって、とても広い。
セウェルス伯爵のエスコートで、もうかなり人のいるダンスホールに入ったが、初顔という事もあってかちらほらと私の顔を物珍しそうに、それでいて下品にならない程度に眺められる。
隣にいるのが王太子派の中心に近い所にいるセウェルス伯爵だからだろう。
そして、彼が妻に先立たれていることを考えたら、容易に私が次の妻になる予定であると察しているのかもしれない。
「さて、クラリーチェ。まずは主催の方と王子様達へご挨拶に行こう。君はにこにこ笑って、最低限の受け答えさえしてればいい」
「分かりましたわ。エヴァンジェリスタ様」
微笑みを浮かべて頷くと、セウェルス伯爵は満足そうに頷き返す。
つまり、彼にはお飾りの妻であって欲しいということか。
そちらの方が気楽だった。
元々愛される結婚だとは思っていなかった。私達貴族の政略結婚は、自分の地位と生活の為にするもの。
そして結婚して一度家に入ってしまえば、滅多な事では人妻に手を出そうとする人はいないだろう。
ファウスト様との関係が見つかる前に、ファウスト様の弱味に私がなる前に。
ファウスト様と離れなければならなかった。
セウェルス伯爵の意図を正しく察した私は、彼の隣に付いてフィリウス侯爵と王子様達がいるらしいダンスホールの一際目立つ集団の方へと歩いて行く。
セウェルス伯爵のエスコートで、もうかなり人のいるダンスホールに入ったが、初顔という事もあってかちらほらと私の顔を物珍しそうに、それでいて下品にならない程度に眺められる。
隣にいるのが王太子派の中心に近い所にいるセウェルス伯爵だからだろう。
そして、彼が妻に先立たれていることを考えたら、容易に私が次の妻になる予定であると察しているのかもしれない。
「さて、クラリーチェ。まずは主催の方と王子様達へご挨拶に行こう。君はにこにこ笑って、最低限の受け答えさえしてればいい」
「分かりましたわ。エヴァンジェリスタ様」
微笑みを浮かべて頷くと、セウェルス伯爵は満足そうに頷き返す。
つまり、彼にはお飾りの妻であって欲しいということか。
そちらの方が気楽だった。
元々愛される結婚だとは思っていなかった。私達貴族の政略結婚は、自分の地位と生活の為にするもの。
そして結婚して一度家に入ってしまえば、滅多な事では人妻に手を出そうとする人はいないだろう。
ファウスト様との関係が見つかる前に、ファウスト様の弱味に私がなる前に。
ファウスト様と離れなければならなかった。
セウェルス伯爵の意図を正しく察した私は、彼の隣に付いてフィリウス侯爵と王子様達がいるらしいダンスホールの一際目立つ集団の方へと歩いて行く。