愛を捧ぐフール【完】
 それに、オリアーナを攫って第一王子に嫁がせられないようにするのなら分かる。だが、危険を冒してまでクラリーチェを攫う利益が見つからない。


 いや、1人だけいた。
 オリアーナが邪魔で、クラリーチェの事を愛している男が。


 それでも、こんな馬鹿げた方法をあいつがとるようには思わない。


 それでも、もうオリアーナと連絡が取れなくなって3日も経った。クラリーチェの無事も確認出来ていない。自分が取れる手段は全て取った。
 たった1つを除いて。




 あいつの執務室の前に立つ。


 前世の妹だったエレオノラを愛し、エレオノラを失った後に辿ったあいつの末路は悲惨だった。


 誰よりも国王に向いている才能があった。
 けれど、誰よりも国王という立場を嫌った人だった。


 勿論あいつの事は親友として、仕える主として尊敬すらしていた。これから一生、仕え続けるんだって思っていた。


 あいつがエレオノラを愛していたのも知っていた。大事にしていたのも知っていた。あの後、イオアンナを愛した俺もその気持ちは分かる。
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