愛を捧ぐフール【完】
「珍しいな。サヴェリオが兄上の所へ来るなんて。兄上の事を嫌っていたんじゃないのか?」

「アルフィオ、それを本人の前で言うのかい?まあ、知っていたけれど」


 少し……いや、だいぶお行儀悪く茶菓子を頬張りながら俺に質問してくるアルフィオ殿下。前世(むかし)も王子をやっていたのもあって、優雅に紅茶を飲むファウスト殿下は呆れたように笑う。


「それで?サヴェリオ殿はどうしてこちらへ?」

「あ、実は……、いや……」


 来たはいいが、貴方の婚約者と連絡が取れません。だなんて、前の夜会でセウェルス伯爵に向けて言うのが躊躇われた事を俺は再び人を変えて言おうとしている。


 口篭った俺の様子を見て、ただ事ではないと思ったのかアルフィオ殿下は眉間に皺を寄せる。ファウスト殿下も茶器をテーブルに置いて、表情を険しくした。
 伊達にどちらとも長い付き合いをしている訳では無いらしい。


「サヴェリオ。遠慮せずに言え。ここには私と兄上しかいない。何があっても揉み消してやる」

「アルフィオそれはまた……。でも、サヴェリオ殿、遠慮なく言ってみてくれ。ここには僕達しかいない」
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