愛を捧ぐフール【完】
「それで?よっぽどの事がない限りサヴェリオはオリアーナ嬢と連絡を取り合わないとは思うんだけど……、結局のところオリアーナ嬢は誰なんだい?」

「ああ、イオアンナだよ」

「……ああ。エレオノラの侍女か」


 イオアンナという名前にすぐにピンと来なかったらしい。ファウスト殿下は、少しだけ考え込む素振りを見せたが納得したように頷いた。


「そう。昔の妻だ」

「……あれ?君って結婚してたんだ?」

「だいぶ後になってからだけどな」

「それは驚きだね。知らなかったとはいえ、婚約者にしてしまってすまないね」

「別にいい」


 隣に座るアルフィオ殿下からビシバシと説明しろという雰囲気が伝わってくるが、どうしたものかと考える。ファウスト殿下は、昔にちょっと色々あった知り合いなんだよと簡単に説明した。


 間違ってはいない。間違ってはいないのだが、非常にざっくりしている。
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