愛を捧ぐフール【完】
 聡(さと)いファウスト殿下も同時に違和感に気付いたらしく、眉を寄せる。


「僕が調べた限りでは、クラリーチェ嬢とオリアーナ嬢の接点はほとんどと言っていいほどない。アウレリウス公爵がクラリーチェ嬢を軟禁する理由も、オリアーナ嬢を軟禁する理由も分からないんだ」

「つまり……接点、二人の関わりがあるとすれば前世しかない……と?」


 組んでいた腕を解き、ファウスト殿下はクリストフォロス、エレオノラ、フォティオス、イオアンナと呟きながら一本ずつ指を立てた。全部で四本。


「かつて同じ国で生きた者達が今、同じ時代でまた生きている。だったら、他にもいておかしくない……よね?」

「おかしくない。おかしくない……が、一体そうだとしたら誰が誰なんだ?」

「……そこまでは分からない。だけどクラリーチェ嬢がエレオノラで、オリアーナ嬢がイオアンナだと知っていたら、かつてエレオノラの侍女だったオリアーナ嬢が間違いなくクラリーチェ嬢を助けようと動くのが分かる人物がいるのだろう」


 大体、ファウスト殿下、クラリーチェ嬢、オリアーナを俺は一目見て見分けられたが、ファウスト殿下にとっては俺とオリアーナについては分からなかったらしいし、俺が他のやつを見分けられなかったとしても不思議じゃない。
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